私が看護師になろうと思ったきっかけは、子どもの頃、受診した病院の看護師さんがとても優しく関わってくれたことです。帰宅途中には看護師になりたいという気持ちになっていました。進路を決める際には、手に職をつけたいという思いもあり、迷うことなく看護師の道を歩むことにしました。看護師になったばかりの頃、当時は現在のようにプリセプターもない時代だったので、先輩の指導方法も異なり、教え方が厳しい方もおり、泣いたこともありました。しかし、次第にお互いがわかってくると、先輩たちとの距離も近く感じるようになり、同僚の皆さんとたわいもない話もできるようになり、振り返ると楽しかったことが思い出されます。新人時代は覚えることが多く大変ですが、一方で、覚えてできるようになる喜びをたくさん感じた時でもありました。特に、私は素敵な患者さんと巡り合えたと思っています。例えば、慣れない注射をする際、緊張で震えていた私に、「打たんと、うまくなれんよ」と言って下さるような経験をもあり、患者さんのおかげで今の私があるのだと感謝しています。
患者さんの生活背景、性格や志向などをしっかりと考えて、適切な看護を心掛けたい
訪問看護師になって5年目になりますが、学生時代から訪問看護師になりたいと思っていました。病棟での看護との違いは、何と言っても患者さんのご自宅が看護をする場所であるということです。患者さんがイヤな思いをされないように、自分の言動や表情には細心の注意を払っています。「来なくていい」と言われればもう行くことができないので、緊張感を忘れずに対応するようにしています。また、訪問前に患者さんの情報を把握しますが、その情報に構えることなく、訪問した時にしっかり観察して、見て感じるということを大切にしています。例えば、同じことを何度も話される患者さんの話題が多少なりとも変化があった時などは、様々なアプローチをして変化の原因を見極めるようにしています。ご家族とのコミュニケーションにおいても、何に困っているのかといった話をお聞きし、実例をもとに適切なアドバイスをするように心掛けています。患者さんの生活背景、これまでの人生、性格や志向などをしっかりと考えて、適切な看護を心掛けることを大切にしています。
患者さんが語る人生のシーンに自分もいるような気分、それを共に大切できるのが嬉しい
訪問看護師の仕事をしていていつも感じるのは、患者さんは病院にいる時よりも、自宅にいる時の方が良い表情をされるということです。また、関わる時間も30分や1時間と比較的長いので、患者さんが自分の人生を語るシーがたくさんあります。その話を聞きながら、私の脳裏に様々な映像が浮かび、そこに自分も一緒にいるような気分になることが多く、その話を患者さんと共に大切に思いつつ看護ができます。また、同様にご家族も自宅だと気持ちにゆとりが生まれ、他人にはなかなか話せなかったことを話してくださるので、私が家族の一員として看護の役割を担っているという気持ちになれます。こういったことが「訪問看護の仕事って良い仕事だなあ」と思える瞬間です。患者さんの傷を治す、体をきれいに拭くなどは家族の一員の気持ちをもつ一方、いつもと違う、状態が変化した時には医療者として、しっかりとメリハリをつけて看護師としての任務を果たせるようにしています。現在は、高齢者の方々の訪問看護が中心ですが、いずれは小児の訪問看護をはじめとして様々な対象に看護を提供できるようにもっと訪問看護についての知識を身につけていきたいと思っています。