後輩達に、道筋を示せる存在になりたい


医薬品会社の営業職を辞めて、看護学校へ

高校卒業後、医薬品会社で営業職をしていた私に、ある時、長く通っていた歯科医院の先生が「同じ医療の世界で働くのなら、メーカーではなく資格を取って働いてみては?」と言ってくれたことがきっかけでした。今でこそ、男性看護師の認知度はあがっていますが、35年前はまだまだ看護の道に進む男性はかなり少数派でした。運よく、同じ看護学校に男性の看護学生が数人いて、私と同じように会社勤めを辞めて看護学校に進学したという先輩もいたため、みんなで助け合いながら、楽しい学生生活を送っていました。

無事に手術を終えた時の大きな達成感が、手術室看護師の醍醐味

今と違って、昔は男性看護師の活躍の場は手術室か透析室のどちらかに限られていました。病棟看護をしてみたいと思うこともありましたが、結局私は透析室と手術室に交互に配属されるという形になりました。現在は手術室の副師長をしながら、外来も兼務しています。手術室看護師は、看護師の中でもとりわけ、命を預かることへの使命感が求められます。緊急事態に備えて予測しながら行動したり、急変の際は医師と協同して迅速に対応したりと、仕事中は緊張を強いられる場面の連続ですが、だからこそ味わえる達成感が仕事の魅力と言えます。私が長く手術室で働いて来られたのは、患者さんの命を守るため、看護師としての能力がダイレクトに求められていると実感する瞬間が何度もあったからだと思います。

何歳になっても積極的に学ぶ姿勢を大切に

スタッフの体調管理や相談など、管理業務は副師長にとって重要な役割ですが、やはり私は、看護師は何歳になっても技術を磨いたり、新しい知識や考え方を取り入れたりする姿勢を大切にすべきだと考えています。その姿勢を見せ続けることが、後輩を育てる事にもつながるはずですし、何よりも学ぶこと自体が自分の原動力になっているようです。また私は手術室だけではなく、病院全体をアットホームな雰囲気にしたいので、日頃からコミュニケーションをとても大切にしています。院内ですれ違う患者さん達にも積極的に声掛けするようにしていて、ちょっと困っていそうな人に「どうしたの?」と聞いたり、歩きにくそうな人にそっと手を添えたり。後輩達がみんな、そういう細やかな気配りができる看護師になってくれたら、とてもうれしいです。